どこでもない場所_本データ_3_

【第3回】受注体質の人の仕事の流儀。(話す人:浅生鴨さん)

元NHK職員であり、現在は広告企画制作を手がけつつ、『伴走者』『猫たちの色メガネ』など幅広い作風の物語を書く小説家でもある浅生鴨さんの初のエッセイ集『どこでもない場所』左右社から出版されました。かもさんのご好意で取材の機会をいただきました。
個人的には、本を読んで不思議な世界に迷い込み、話を聞いてさらに迷いの森の深くへと踏み込むこととなりました(笑)。しかし内容は、主体性のない人生の楽しみ方や受注体質の人のための仕事の流儀をはじめ、文章の書き方のお話にまで広がり、読み応えのあるものになったと思います。お楽しみいただけると嬉しいです。

浅生鴨さんのnoteはこちら

第3回 受注体質の人の仕事の流儀。

末吉
例えば、ご自身でプロジェクトを立ち上げていくみたいな。そういうお気持ちは、あまりないんですか?

浅生
あんまり。ゼロではないんですけど、人に認められたいとかほめられたいという意欲がないんですよ。もちろん、ほめられたらうれしいし、ちやほやされたいですけど。

なんだけど、そこは目的じゃないんですよね。例えば、バンドをやるきっかけって、モテたいっていう人が多いじゃないですか?

末吉
ぼくの周りもたくさんいましたねー。

浅生
ぼくは、モテたいきっかけでバンドをやることはなくて、誘われたからやるっていう。

末吉
ほんとに受注体質というか。

浅生
うん。それで、やる以上はちゃんとやりたいので、他の人よりも練習するし。あと、勝手に「いや、やるんだったらライブやんないとダメでしょ?」って言って。

末吉
あ、そこからは主体的になっていくんですね?

浅生
いや、主体的というか。当然やるべきことのひとつだから。

末吉
ああ、そうなんですねえ。まあ、そうですけどね。

浅生
「ライブハウスブッキングしたよ!」みたいなことはあるんですけど、その手前のスタートのとこは全く興味なくやってるんですよね。

末吉
それは最初、受注するときってことですか?

浅生
うん、ほんとに興味ない。ただ、受注した以上、完全なものを納品したいんですよ。

ようするに、発注した人にちゃんと返さないと悪いなあっていう。その人が損しちゃマズイだろうとか、そういうことなんです。

末吉
なるほど、動機はそこにある。

浅生
受注するって、そういうことだと思うんですよね。

結果まで引き受けるのが受注だから。

例えばNスぺ(NHKスペシャル)の広告をやってくれって言われたら、ぼくは必ず10%以上視聴率取るって決めます。いままで全部そうなので。ぼくが広告受けたNスぺは全部10%超えてるんですよ。

で、超えそうにないやつは断ってるっていうのもある(笑) その前に、プロデューサーを試験するんだけどね。

末吉
あー、一緒に組む人を?

浅生
そう。だから発注されても、その人がどこまで本気でその番組をつくってるのかをインタビューして、「あ、この人は流行りだからこれやってるのね?」みたいな感じだったら、ぼくは今回ちょっとできませんって断ったりします。

末吉
じゃあ、適切な言葉かわからないですけど、やるってことに対するプロフェッショナル性というか。そういうものを常に…

浅生
なんだろなあ。

必殺仕事人が仕事を請け負うっていうことは、確実にやるっていうことじゃないですか。「金3両もらったら仕留めます」っていう。そこで仕留めないわけにはいかない。

だから、ぼくは金3両をもらいたくないんですよ。もらわなきゃ何もしなくて済むので(笑)

末吉
(笑) 

その動機はやっぱり、請けるからにはその人たちを損させたくないとか、負けさせたくないとか?

浅生
まあ、結局、喜んでもらえるっていうことなんだと思うんですよね。自分の喜びっていうよりは、その発注してくれた人が「いやー、頼んでよかった!」って言われることがおもしろいっていうか。それがたのしいですよね、なんか。

ぼく自身がほめられたいというよりは、その人がほめられるのがたのしい。だから、感覚として伴走者なんだと思うんですよ、やっぱり。

末吉
ではある意味、ご自身のコンセプト通りというか。

浅生
いやまあ、書いたらたまたまだったんですけどね。そんなに深くは考えてない(笑)

もちろん生活のためにね、やることはあるにしても、基本的にはここに所属してるからやらなきゃいけないってことはないし。イヤだけどやらざるを得ないみたいなこともないので。

やんわりと「どこでもない場所」も最初は断ったけど、結局やってるっていうのは、つまりやらざるを得ないと思ってやってるわけじゃなくて。

末吉
わけじゃなくて、何か……?

浅生
うん。じゃあまあ引き受けたら、編集者さん喜ぶだろうなってのがあるわけですよ。うまくいってちょこっと売れたら、出版社喜んでくれるだろうなみたいな。

末吉
そうかあ。そういうところで、結果的に別になにか外からの圧力とか、何かから強制されて書いたわけではなかったってことですよね? ご自身のなかで。喜んでもらってるだろなあとか。

浅生
人を不快にするのと、喜んでもらうのとどっちがいい? っていったら、喜んでもらうほうがよくて。

でも、ほらなんだろ。SNSで人を不快にさせて盛り上がる人たちとかもいるじゃないですか。わざわざそんな、不快にさせなくてもいいのになあっていう気持ちで、ああいう人たちをぼくは見てるんですよ。

末吉
そうですよねえ。ちなみに、どういうふうに見られているんですか?

個人的には自分の中にもなくはないな、ああいうダークな部分という視点で見ていたりします。自分では出せませんが(笑)

浅生
いや誰しもあるし、うまいこと皮肉言うとかって、ちょっとカッコ良かったりするんですよ。だけどなんかね、それって自分がすり減る気がして。いまはちょっとね、なにかに対して怒ることがエンタメになりつつあるから。

末吉
たしかに。戦いで興奮するみたいな。

浅生
うん、単純にエネルギーいるから、めんどくさいって思ってやらないんですけどね(笑)

( つづきます )

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【『どこでもない場所』について】
できればお近くの書店に足を運んでご購入いただけると嬉しいです。( かもさん曰く、書店さんが嬉しいから僕も嬉しい ) ですけれども、置いてないお店もあるようで迷子になってしまうかもしれませんので(笑)、Amazonならば確実にお手元に届くと思います。どちらにしてもぜひ〜。

読み終わったあと、きっと世の中の見え方が少し変わって、( 不思議で愉快に )見えてくるはずです。


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正直がいちばん。
78
物書き、コンテンツプロデューサー。フランス移住を一時断念し帰国。あなたの人生が動き出す本『ヴェヴァラサナ王国』を1日1ページ更新中。ツイッターも。https://twitter.com/hiroomisueyoshi