
Photo by arinkosan
時間とともに、年齢が若くなることがあったっていいじゃない。
東京の朝のバスは混んでいる。満員電車と比べるとマシだけど、つり革につかまって揺らされている人がずらり。ボーッと外を眺めて立っていると、「前で立ち止まらないでくださ〜い。ベビーカーも乗っています、後ろへおつめくださ〜い」と、なにやら運転手さんが荒ぶっているようで。「学生さん、あなたですよ」とピンポイントで語気の強い指摘まで入った。
ぼくは真ん中より奥にいたから無視していただけど、運転手さんの荒ぶりは収まらず、「そこまで言われて動かないって、誰だよ」と目線を窓の外から車内に戻した。が、しかし、どうにも学生らしき人が見当たらない。もうすこし広範囲に渡ってキョロキョロ見まわしたが、やっぱりダメだ。そしてぼくは、衝撃の仮説に思いあたることになる。
え、
もしかして……
ぼくのこと言ってます?
コンフューズ。だってだって、自慢じゃないけど、大学1年生ピチピチの18歳のときにぼくは、家庭教師の営業のバイトをしていると、お母さんがたから、「で、先生は、お子さんは何人いらっしゃるんですか?」などと頻繁に聞かれた男であるぞ、と変なノリの言い訳が出てくるくらいに、混乱したのだ。
ぼくが混乱をきたしているあいだに、乗客は無事みんな乗れたみたいで、バスは出発した。三度目の正直。もう一度ぐるりとバスのなかを見渡したが、やっぱり学生らしき人はおらず、ぼくがいちばんそれっぽかった。たしかに、きょうはラフめな服装ではあるけれども、ねぇ。という感じだ。そして、こう結論づけることにした。
ぼくは学生に見えるくらい、若返ったのだ、と。
たしかに最近、若くなったね、とよく言われていたっけ。そして、こういうことなのかなと思った。そういえば、自由に楽しく生きているなぁ、むかしよりもずっと。いちばん大きいのは、他人の目を気にしなくなったこと、それによる気疲れが減ったことだろうと予想している。肉体的な年齢は重ねてきたけれど、それに反比例するかのように、気持ちは若返ってきたのかもしれない。
人生は、いつだって、
いまから、だ。
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きょうも読みにきてくださって、ありがとうございます。天気と気分って、密接につながっていますね。見事に澄んで深い海のような色をした空を見上げて思いました。
有料マガジン「末吉さんの文章喫茶店のようなところ」を廃刊しました。たくさんの読者さんがいてくださいましたが、あたらしいチャレンジをするために大切な場所を手放す決断をしました。
最後までお付き合いくださったみなさん、以前に入ってくださったことのあるみなさん、ほんとうにありがとうございました。
いっそう自分らしさを追求し、これからもベストな形で分かち合っていきたいと思います。ぜひそれぞれのタイミングや形で、関わっていただけたらうれしいです。
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