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絶望の種類。

目を醒ますと部屋は薄暗かった。コーヒー多めのカフェラテのように黒い成分のほうがちょっぴり多いようだ。時計は4時過ぎを示している。お昼少し前から眠っていたはずだから5時間ほど眠っていたことになる。

物理的時間だけをみればしっかりと眠っているはずなのだけれど、体にはまだ、疲れがべったりと纏わりついている。じぶんの体に意識を向けて点検すると、それは身体的な疲れというよりは感情的な疲れに属するものであるらしかった。さてと、腹の下に力を入れてベットから体を引き剥がす。

シャワーを浴びながら、疲れの原因を探してみた。割とすぐに答えらしきものにたどり着いた。その感情的な疲れは、ジャック・ロンドンの小説『マーティン・イーデン』を読み終えたことに端を発しているようだった。

パワフルな絶望。

そのひと言に集約される。これまでのどの本でも味わったことのない種類の感情が腹の底に残った。次第に弱り灯火が消えてゆくでなく、体のなかで力強く暴れまわる絶望。それもまたずいぶんと苦しいものある。

人々に捨てられて薄汚れ、腹を空かせた野犬のような感情を飼いならすことはできるのだろうか。じぶんのなかにだって存在するはずの、パワフルな絶望を腹の底にとどめたまま、熱いお湯を頭から浴びつづける。そうしてゆっくりと、石鹸をそのまま体に当て撫でるようにして全身を洗った。

びしょ濡れの体をバスタオルで拭う。体の疲れが落ち着いていることに気がついた。新しい下着と服を身につけて、雨降る街へと足を踏み出した。


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レット・イット・ビー
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物書き、コンテンツプロデューサー。フランス移住を一時断念し帰国。あなたの人生が動き出す本『ヴェヴァラサナ王国』を1日1ページ更新中。ツイッターも。https://twitter.com/hiroomisueyoshi