見出し画像

なんでもない、この瞬間を描写するのが好きだ。

 六本木ヒルズそばのTSUTAYAで赤いソファーに座っている僕。目の前にはベビーカーには、寝ているといえるのか座っているといえるのか、その中間くらいのかたちで娘。薄いピンク色の綿でできた小さなくじらのぬいぐるみをぶんぶん振り回したり、はむはむと咥えている。ほっぺをぷにぷに触って遊んでいると、となりの席のガタイのいい中東系の外人男性が娘ににっこり笑いかけてきた。

 カップに汗をかいたアイスコーヒーのストローをきゅうっと吸って、さっき買ったばかりの岸政彦さんの小説『図書室』のページをひらいた。その小説は、雨が降ってきた、という一文からはじまる。ほんとに、なんてことのない描写なんだけれど、そこには確かな重みみたいなものが感じられた。あ、この小説は好きになれそうだ、そう予感した。買ったはいいものの、最後まで読みきれない本もたくさんあるなかで、その本が感覚的に好きになれるかどうかは重要な要素だ。

 物語の主人公である中年の一人暮らしの女性が、過去に通った公民館の図書室で出会った男の子ととなりあって本を読むくだりになったとき、娘が何かを教えてくれるかのように声を発しはじめた。穏やかさと物悲しさが漂う物語の世界から現実世界へと引き戻された。おむつの端っこが茶色く変色していたのだ。荷物を片付けて、急いで多目的トイレへと入った。

 そのまま直行でお家へ帰る。途中から泣きはじめる娘。ばたばたと部屋へ戻ると、僕はすぐに冷凍母乳をあたためる準備をして、娘の服を脱がせ僕も服を脱ぎシャワーを浴びて汗を洗い流す。さっぱりとしたはいいものの、娘はお腹が空いたのか涙を流して泣きつづける。急いでおっぱいをあたためて、哺乳瓶を口の前まで持っていくと慌てて咥えていた。飲んでそのまま爆睡。しばらく平和が訪れる、かな。小説のつづきを読もうかな、仕事を進めようかな、どっちにしようかな。

✳︎ ✳︎ ✳︎

 きょうも読みにきてくださって、ありがとうございます。子育てってたのしいけれど、ラクじゃありませんよね。いつも思います。世の中のお母さん、お父さん、ほんとうにお疲れさまです。育児を奥さん任せにしている世の男性陣のみなさん、奥さまをよぉく労ってくださいませ。

★ 有料 note をプレゼント!
コンテンツビジネススクールのメルマガをいよいよスタートさせます。スタート記念企画ということで、note で有料販売している「作家、セミナー講師になる5つのメリット」を登録してくださったみなさんにプレゼントします。8月8日よりスタートです! ピンときた方はぜひ登録してくださいね〜✨

ご登録は こちらをクリックしてください😄

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

( ´ ▽ ` )ノ
105
物書き、編集者。小説集『ブンガクフリマ 28ヨウ』に短編小説が掲載。年内フォロワー1万人を目指してます。応援よろしくお願いします。ツイッター:https://twitter.com/hiroomisueyoshi
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。