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little boy.

「ぼくにはできないよ…」

そう声に出すこともできず、心の奥のほうに押し隠してる。お父さんとお母さんに、先生や友だちに合わせて心配されないように明るく振る舞う。ぼくはじょうずに笑えてるかな。よるにひとり、お風呂で涙をながす。ゆらゆら立ち上る湯気のおかげで涙のあとが残らないから。おもいっきり、しずかに。

お父さんとお母さんに挟まれて布団で寝てる。夜中に目がさめておしっこ。ねぇ、おトイレについてきてほしいな、口元まで出てきて飲み込んで。だってもう、ぼく赤ちゃんじゃないんだから。あったかい布団のなかに潜りこむとからだが震えてた。ちいさく、ふるふると。

天井で静かに息絶えた電気をみつめてる。いつもはうるさくて嫌いなお父さんのいびきに耳をすませる。何度も目を閉じてみても、どうも上手く眠れない。言えなかった言葉たちがクローゼットの隙間からのぞいてる。反対を向いてすやすや寝ているお母さんにしがみつく。ぎゅっと、つよく。

夜はまだ長い。

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物書き、編集者。年内フォロワー1万人を目指してます。応援よろしくお願いします。小説集『ブンガクフリマ 28ヨウ』に短編小説が掲載。自分らしく生きるためのメルマガを月額400円で配信中。ツイッター:https://twitter.com/hiroomisueyoshi
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